―世界は、彼女たちの調律で保たれている― 家の事情により、およそ１２年ぶりに訪れた街。 房総半島の南にある三ッ池市が、俺の高校生活を過ごす場所となった。 都市開発の影響で、当時とはガラリと雰囲気を変えた街並みでも、従妹は変わらない笑顔で待っていてくれた。 １２年ぶりに再会した従妹や、新しく出会った仲間たちと過ごす新生活。 賑やかに過ぎると思われた日々は、たった一つの言葉から失われてしまう。 ――黒の淑女―― 再開発に沸く街で、次々と起こる不可思議な事件。大人たちの隠す、過去の歴史。 それらはやがて、侵食されるようにジワジワと混じり合っていく。 この街にはなにがあるのか？ 黒の淑女は誰なのか？ 俺はなにを忘れ、なにを思い出すのだろう……？